【#真相をお話しします】スマホ社会短編ミステリー

#真相をお話しします 小説、物語

どうも!読むのも、書くのも、食べるスピードまでも遅いKazuです。

今回の本は

『#真相をお話しします 結城 真一郎(著)』です。

#真相をお話しします

結城 真一郎『#真相をお話しします』(新潮社刊)

著者である結城真一郎氏のNHKラジオでのインタビューを聞いて読んでみようと思った本。

著書曰く、”この作品では今までの作家が描いていないモノを描いた”とおっしゃっていて。

「こいつは読まねばなるまい!」と読みたい本リストに入れていた本です。

 

読んでみて、これは読者を選ぶ作品だと思いましたが、私は楽しめました。

既読感や既視感があるのが気になったくらいで、

作者の意図にハマってドンデン返しにビックリの連続でした笑。

それでは

一緒に結城真一郎ワールドを覗いてみましょう!

 

著者紹介

結城真一郎

今回取り上げる本は

#真相をお話しします 結城 真一郎(著)』。

著者は結城 真一郎氏、

東京の超難関中学である開成中学校→

東京大学法学部→ビジネスマン兼業作家。

前述のラジオで結城氏が述べていましたが、

開成時代の卒業文集で

『バトルロワイヤル 高見広春(著)』のパロディとして同級生を登場させた小説が

保護者や教師に大ウケだったことが小説を書く原体験のようです。

Wikipediaによると、平成生まれとして初の第74回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。

この日本推理作家協会賞の過去の受賞者は、松本清張京極夏彦東野圭吾湊かなえ

と現在も名の知れた作家さん達がずらりと名を連ねます。

今回調べてみて、結城 真一郎氏が勢いがものすごい新進気鋭の作家さんでした。

(君、知らなかったの?という声が聞こえます涙)

少し検索するだけで、読売新聞、朝日新聞、日経新聞などなどからインタビューを受けまくってます驚。

まさに、今ノリに乗っている超人気者ってことですね。

さて、結城 真一郎氏は現在は会社員勤めの傍らで執筆活動をしています。(記事執筆当時)

華やかしい経歴から”いわゆるエリート街道一直線の人がなぜ小説家?”と私は疑問に思ってしまったのですが

インタビューで小説家を目指すことについて勇気がいる路線変更ではないかと問われ、

それは正直ありました。周りの期待もありますし、自分としてもそのルートにのらなきゃいけないっていう強迫観念みたいなものがあって。だから中3で小説家になりたいと思ってからも、具体的には行動に移してなかったんですよね。…卒業ぎりぎりに一篇書いて、新潮ミステリー大賞に応募しました。それは落選したのですが、社会人3年目で書いた『名もなき星の哀歌』で同賞を頂き、デビューできました。

出典:結城真一郎さん「#真相をお話しします」インタビュー リモート飲みにマッチングアプリ、“今”すぎるミステリー https://book.asahi.com/article/14654581

と語っています。やっぱり、既定路線を外れるのは勇気が必要だったんですね!

結城 真一郎氏の非常にオモシロイ点は、ライバルの存在です!

各インタビュー記事で同じ学部の同級生だった辻堂ゆめ氏が「このミステリーがすごい!」の大賞を受賞し

先に作家デビューをしたことが結城氏のハートに火を付けたと語っています。

この関係に漫画『バクマン。』を思い起こすのは私だけでしょうか笑?

しかも、二人は東大在学中は顔はもちろん名前も知らない中だったにも関わらず、

小説家デビュー後は飲みに行くほどの仲になったそうです。

このライバルとの切磋琢磨の関係性はまさに『バクマン。』の主人公ら亜城木夢叶(あしろぎむと)と

ライバル新妻エイジの関係をそのままじゃないですか!(熱く語ってなってすみません汗)

また、以下のエピソードが著者の人柄を示しているように思います。

東大当時、自分がバイトと飲み会で過ごすうちに小説を完成させた同級生がいるのに驚き、

自分は何だと。本気で書けよって自分に対して思ったそうです。

この著者なかなか熱い人だと思うのは私だけでしょうか…笑。

まだ若く、作品も4点くらいで(23年6月現在)、

これからさらに飛躍していくことが期待される作家さんです

〜寄り道〜

ちなみに、『バトルロワイヤル』の高見氏はその後の作品がないらしいです。(Wikipedea情報)

当時衝撃を受けた私としては、一発屋で終わらないで欲しいと切に願っています涙。

オススメ読者、特徴

ミステリーを解く読者像

オススメ読者:

  1. 現代的短編ミステリーが読みたい人
  2. 作者にまんまと裏切られる話が読みたい人
  3. 現代社会の闇が知りたい人
  4. 華々しい経歴の小説家に興味を持った人

特徴:スマホ社会の今を描く作品。”これ現実にもあるかも…”って思わされるストーリー。

総評・感想

総じて、とても読みやすく、とてもオモシロイ本でした

まず、作者の文章のリズムは、軽快です。

主人公が「では違和感について解説してみよう!」みたいなノリで語り出すので

ときおり軽快過ぎるところがありますが、短編集だから話を進めないといけないですからね。

全体の構成から仕方ない部分もあると思います。

この作品が苦手な人は主人公キャラが

①軽く物事を進めがち(仕事、殺人など)

②説明口調になりがちであること

③②と重なりますが、違和感を語りがちであること

の3点が読者によってはウケないのかもしれませんね。そこがまた良いところでもあるのですが…。

次に、本書には「惨者面談」、「ヤリモク」、「パンドラ」、「三角奸計」「#拡散希望」

という5つのショートストーリーが記載されています。

この中で私が一番面白かったのはパンドラです。

他の作品が現代的で心地良い軽薄さが感じられるのに対し、

この作品はサスペンス要素をまったく感じさせません。

テーマが不妊、精子提供、人工授精と重厚感満点であることから、

主人公を取り巻く関係者の心理描写が秀逸です。

私は読んでいて、不妊に悩んだ経験から同じ苦しみを味わっている人々のため、

自分の精子を提供することを決意した主人公に共感してしまいました。

最後は、続きが知りたいと思ってしまうほどでした。

私的には、”パンドラ読めたし本作読んで良かったなぁ”と思っています。(大げさですね笑)

読みどころ①「パンドラ」という短編

#真相をお話しします パンドラの箱

総評にも書きましたが、「パンドラ」で描かれている登場人物それぞれの葛藤は心動かされます。

  • 精子を提供した主人公
  • 目の前に現れた精子提供によって生まれた14歳の娘
  • 子どもの血液型から推測される妻が過去に取ったであろう行動、等など

たった45ページの短編でも読み進めていくうちに関係の複雑さが徐々に明らかにされ、

その関係性とそれぞれの心の内が描き出されていきます。

繰り返しますが、私は、”これ長編にしても良かったよね?むしろ、長編でこそ味わってみたい”と

勝手に長編化を希望してます笑。

私は「パンドラ」を読んでみて作者はシリアスな展開も相当上手く描けるんだろうなと勝手に想像してます。

テーマが重たいので、登場人物の苦悩をじっくり味わいたい人におすすめです。

読みどころ②読者諸君は裏切られる運命

#真相をお話しします 裏切りの展開

本書は宣伝キーワードは”ドンデン返し”です。悔しいですが、私もドンデン返しにやられてしまいました笑。

たぶん、読者の読んでいて95%は「ドンデン返し」をくらいうと思うます。

ですから、著者からの挑戦を受けて見事にドンデン返しされる気持ち良さがあります。

ドンデン返し見抜いてやる!と覚悟で読んでも、見事撃沈しました。以下、各短編ごとの私のヤラレ方です。

  1. 「惨者面談」 漫画で読んだ展開だな(”ミステリと言う勿れ”)。
    →何?そっちが悪意あったんかい!
  2. 「ヤリモク」 カタカナの題名気になるな、実は自分の子だったら寒いなぁ
    →嘘、娘さんそんなことしてたんだ。
  3. 「パンドラ」 予想するまでもなく、物語に引き込まれました笑。
  4. 「三角奸計」 ドッキリ落ちあるかも?、女幽霊が登場するとか?
    →それは主人公仕方ないわ、でも友達君は殺るんだね汗。
  5. 「#拡散希望」 島暮らしの人最近多いもんな→親どういう神経してんの、つか、主人公の豹変が漫画で見たことあるな(”DEAD Tube”)。

って感じで裏切りの連続でしたね笑。逆に、裏切られるのが返って清々しい。

裏切られる気持ちを味わいたい方におすすめです。

読みどころ③現代の狂気は小説並なのだと知る(共感なし!?)

#真相をお話しします 犯罪現場

まず前もってお断っておきます、以下は私の偏見です笑。

私は本作の全く共感できない殺人者たちを見て、現代社会の意味不明な犯罪と重なるものがあると思いました。

少し軽薄な動機で殺人に至る人物が多く登場する本作、読んでいるときは

”おいおい、そんな理由で人殺しちゃダメでしょ!”と思っていました。

ですが、現代社会で日常的に目にするニュースでは本作同様に犯行側の動機が理解できないことも多いことに

気が付きました。日々のニュースでは、意味不明な行動で他人に迷惑をかけているのを見聞きします。

そういう面から読むと、荒唐無稽だと失笑していた本作の登場人物が少しずつリアリティを増していきました。

身近に本作のような意味不明な行動を取ってしまう人が身近にいるのかもしれません汗。

まとめ

いかがでしたか。

今回は#真相をお話しします 結城 真一郎(著)を紹介しました。

著者の結城氏はインタビューで今後の執筆活動について語っています。

今後全部の作品で、前作を超えていくというのが物理的に可能かと問われると、たぶん不可能だと思います。なので、毛色の違うものとかでやっていきたいなと。驚き要素よりもヒューマンドラマを強めにしている、という形にすれば、前作より驚きはなくても、違う方向で楽しめるような形にはなるので、そういう風に幅が広がっていったらいいなと思っています。

出典:Dream HEART vol.504 小説家 結城真一郎さん 「今同じ時代を共有している人たち全てに向けた挑戦状」

https://www.tfm.co.jp/dreamheart/index.php?catid=1745&itemid=191172

これ、やっぱりパンドラ系の話が来るんじゃないですか?(ワクワク)

今後の結城 真一郎氏の作品が楽しみですね。

この記事が皆さんの読書ライフの一助となればうれしいです。

皆さんも良い読書ライフをお送りください。

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