どうも!少しずつ本を読もうと思っているKazuです。
だいぶ、上巻を紹介してから時間が経ってしまいました汗。
今回取り上げる本は
『NOISE 下 組織はなぜ判断を誤るのか? ダニエル・カーネマン(著)』です。
下巻ではいよいよノイズを減らす方法論へ切り込んでいきますよ。
私と一緒により良い意思決定への第一歩を踏み出しましょ(!?)。
本紹介 ※【本 NOISEノイズ 上】ページも参考に!
『NOISE 下 組織はなぜ判断を誤るのか? ダニエル・カーネマン(著)』
著者は2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏。
判断ミスの原因となる
①バイアス(系統的な偏り)
②ノイズ(ランダムなバラツキ)のうち、
ノイズに焦点を当ていることが本書の特徴です。
下巻では主にノイズ対策が取り上げられていますが、バイアス対策についても言及されています。
私自身判断ミスが多いため、参考にできないかな?と思ったことが本書を読むキッカケでしたが、
本書では個人というよりは組織としてノイズを減らすという目的に合致した方策が紹介されています。
オススメ読者、難易度、レベル
オススメ読者:
- 組織としてノイズを減すための意思決定プロセスを設計したい人
- 平均二乗誤差、バイアス、ノイズといった統計用語に嫌悪感を抱かない人
- 無駄なコスト、非効率、不公平を是正するヒントを探している人
- 人事評価から病院や公的機関などの公益に関わる仕事をしている人
難易度:★★〜★★★
レベル:基礎書〜専門書
総評・感想
本書で取り上げられている病院、採用委員会、計座予測、政府機関、保険会社、公衆衛生局、刑事訴訟制度、
大学などの諸機関に属する方々に是非一読願いたい本です。
なぜならばそれら機関の意思決定におけるノイズ削減≒社会の不公平緩和につながるからです。
ダニエル・カーネマン氏は、裁判官の量刑判決や難民審査の判定などの決定にもノイズが含まれており、
ノイズによって結果に不公平が生じている現状を示しています。
そして、
” バイアスがエラーと不公平につながる事は誰でも知っているが、ノイズもそうである。にもかかわらず、ノイズを減らす対策はあまり講じられていない。 判断エラーは、何か原因のあるときよりランダムに起きるときのほうが許容できるように感じられるかもしれない。だが、不公平を生む点では同じである。重要な事柄についてより良い判断をしたいと望むなら、ノイズを減らすことを真剣に考えるべきである”と述べています。(第6部 ノイズの最適水準より)
と述べています。私個人の問題として判断ミスの原因を探っていましたが、
ノイズ削減が社会正義つながる壮大なテーマだったのだと読み終えて気付化されました。
私個人の判断ミスなんて小さいものだったようです笑。
読んでみて下巻は上巻よりも実践的な内容が豊富ですが、難解なところもあると感じました。
ですが、著者はしっかり「まとめと結論 ノイズを真剣に受け止める」という章を設けてくれていて、
そこで上下巻の内容をわかりやすくまとめて説明してくれています。
もし本書を手に取ってみて、”内容が難しい”、”とっつきにくい”、”もっと具体的に知りたい”と感じたならば、
ページをスッ飛ばして「まとめと結論」と付録A、Bを読むと良いかもしれません。
本書で例示されているノイズ削減対策は参考にする価値が十分あります。
読みどころ①賢く謙虚な人ほど良い判断をする
身も蓋もない話ですが、
知的能力が高い人は良い判断を下しやすいそうです汗。
本書では知的能力の例として一般知的能力を計測する
general mental ability=GMAテストの点数が挙げられています。
ちなみに、アメリカでは高い認知能力を持った人材を集める目的で
採用試験に用いられているそうです。
さすが、アメリカは効率的で露骨ですね汗。
つまり、率直に言えば
日本ならば認知能力が高そうな東大生や京大生が判断力が良いということになります。
そして、著者は
一般的な知的能力は、判断を要する職業における優れた結果に大いに貢献するのであり、GMAスコアが高い集団の中でも、スコアが高いほど職業上の実績も高い、と言うことである。…。判断力が求められる仕事に誰かを採用するなら、できるだけGMAスコアが高い人間を選ぶことが理に適っている。
と述べています。
さらに重要なのは、知的能力以外にも認知スタイルの違いというものも存在する点です。
良い判断をする人は、ダニエル・カーネマン氏が前著『ファスト&スロー』で述べたシステム1(速い思考)より
システム2(遅い思考)に頼る傾向があり、表面的な即断を避け、
自分の仮説に反するような情報や反対意見を積極的に受け入れ、慎重に天秤を掛ける態度を示します。
つまり、東大生にさらに
”難解で考え続けないといけない問題に取り組むのが好き”、
”自分の考えを捨てても、他人の考えの良い点は積極的に採用する”
という条件を付けて選別し判断を任せれば、ノイズは減らせるということでしょう。
しかし、そんな人材はどうやって探せば良いのかがわかりません笑。
最後に、著者により
判断の質の差は認知能力と認知スタイルで説明可能でも、判断の質を明確には予想できないという
限界が示されています。
読みどころ②判断は分離独立し、統合する
意思決定を行う際は、
①プロセスを分解して各パーツに分けてから、
②専門家が独立して判断を下したものを最後に統合する
という過程を踏むことが勧められています。
分離独立させること自体は、ノイズよりも周りの判断に引っ張られるバイアスを減らすように感じますが、
分離独立させることでストーリーの整合性に判断が歪められてしまう過度の一貫性を防ぎ、
ノイズを減らすことができるようです。
確かに、私は学生時代に作文や国語の試験で前の問いの答えとの一貫性を気にして、
大きな失点につながることがよくありました。あれもノイズだったんですね笑。
さらに、一個人が判断ミスを犯していても、独立した判断の平均をとれば、
複数の判断を積み重ねることでバラツキが減少し積み重ねる数が多いほど集団の知恵の効果が働き、
ノイズが減少していく効果が期待できます。
これは有名な”三人寄れば文殊の知恵”ですね。昔の人はちゃんと経験則でノイズを減らす方法を
知っていたんでしょうね、感心しちゃいます。
まとめ
今回は骨太の作品
『NOISE 下 組織はなぜ判断を誤るのか? ダニエル・カーネマン(著)』
を取り上げました。
下巻を読むまでだいぶ時間を経てしまいましたが、
判断ミスの原因となるノイズ対策について示唆に富んだ内容でした。
本書を読み終えて今後の課題も見えてきました。
まず、私の興味はいかに自分の判断ミスを減らすのかだったのですが、
今度は”判断ミスを減らすために自分の認知能力を向上させる”という課題が見つかりました。
これは既に手遅れな気もしますが、諦めず他の本にも当たりつつ自分の可能性を広げようと思います笑。
また、ダニエル・カーネマン氏が前著『ファスト&スロー』の記述があり、
どんな内容なのか興味が湧いてきたため、いつか読んでみたいと思いました。
拙文にお付き合いいただきありがとうございました。
本書により皆さんの読書体験がより充実することを願っています。